妊娠・出産後や立ち仕事に従事している人の中には、足の血管がこぶのように膨らんで静脈瘤を形成することがあります。足の静脈瘤には、蜘蛛の巣みたいに細いものから太いミミズのようなものまで様々な程度があり、また、出現部位は膝下の下腿に多いのですが、太ももまで静脈瘤が出ることがあります。発症初期は無症状ですが、鈍痛やむくみ・かゆみ・疲れやすさなどの症状が出たり、発赤腫脹を伴うような静脈炎を起こすことがあります。さらに症状が進んで皮膚潰瘍を伴うようになると、難治性の様相を呈してきます。こむら返りが起こりやすくなったというのも、下肢静脈瘤の随伴症状だったりします。
静脈炎を合併している時には抗炎症剤が処方されますが、静脈瘤そのものを退縮させる薬物療法はなく、まず静脈瘤用の弾性ストッキングを着用してみます。ただし、ストッキング着用は静脈瘤を治癒消失させるものではなく、立ち仕事中の症状軽減・悪化防止の処置という位置づけです。美容的に見た目が気になる時と、鈍痛・疲れやすさ・静脈炎併発などの症状がある時には、患者さん本人と相談の上、手術適応としています。
蜘蛛の巣状・網目状などの軽い静脈瘤では、硬化療法を選択します。麻酔は必要でなく、普通の点滴針を刺入し、液体の硬化剤を注射するだけで治療が終了します。一度に3カ所ぐらいまで注入を行い、弾性ストッキング着用で帰宅となります。分枝状静脈瘤や伏在静脈瘤、いわゆるミミズ腫れでは、硬化療法単独の治療では不十分であり、局所麻酔下での静脈瘤切除やストリッピング手術を行っています。
ストリッピング手術とは、静脈弁逆流(下肢静脈瘤の原因)を起こしている大伏在静脈を、長いまま抜き取ってしまう手術のことです。再発せず確実に治したいという場合には、レーザー治療より優れた効果が期待できますが、通常は腰椎麻酔による手術となるため入院が必要です。
当院では、開業以来、日帰りのストリッピング手術を行っています。麻酔を静脈麻酔+大量希釈局所麻酔で行うことにより、手術終了直後から起立・歩行が可能となります。手術を受けた方は、術後2時間ぐらいの点滴・安静で帰宅されています。
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伏在静脈瘤 |
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分枝状静脈瘤 |
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網目状静脈瘤 |
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クモの巣状静脈瘤 |
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